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本屋大賞2006年 4位:『容疑者Xの献身』東野 圭吾
『容疑者Xの献身』の内容の紹介
花岡靖子は娘・美里とアパートで二人で暮らしていた。そのアパートへ靖子の元夫、富樫慎二が彼女の居所を突き止め訪ねてきた。どこに引っ越しても疫病神のように現れ、暴力を振るう富樫を靖子と美里は大喧嘩の末、殺してしまう。今後の成り行きを想像し呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神だった。彼は自らの論理的思考によって二人に指示を出す。
そして3月11日、旧江戸川で死体が発見される。警察は遺体を富樫と断定、花岡母子のアリバイを聞いて目をつけるが、捜査が進むにつれ、あと1歩といったところでことごとくズレが生ずることに気づく。困り果てた草薙刑事は、友人の天才物理学者、湯川に相談を持ちかける。
すると、驚いたことに石神と湯川は大学時代の友人だった。彼は当初この事件に傍観を通していたが、やがて石神が犯行に絡んでいることを知り、独自に解明に乗り出していく。
著者「東野 圭吾」について
1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞。
初期の作風は、学園物・本格推理・サスペンス・パロディ・エンターテイメントなど多彩。エンジニア出身であるためか、原子力発電や脳移植などの科学を扱った作品も多い。その一方でスポーツにも関心があり、大学時代には部の主将を務めていたアーチェリーや中学時代にやっていた剣道、野球、スキージャンプ、スノーボード等を題材にした作品もある。
『秘密』がベストセラーになる前は、レベルの高い佳作を数多く執筆しながらも爆発的な話題作には恵まれず、特定のセールスポイントを打ちだすこともなかったため、一般的には地味な存在であった。ただし、ひそかな愛読者は少なくなく、映画監督の実相寺昭雄は1993年にパソコン誌の連載エッセイで大切な作家と言い切っている。
シリーズキャラクターを必要最低限しか使わないことでも知られていて、『赤い指』『卒業』『私が彼を殺した』『悪意』『眠りの森』などの加賀恭一郎、『探偵ガリレオ』『予知夢』『容疑者Xの献身』の湯川学など数えるほどしかいない。また、同じ主人公でもストーリーはそれぞれ独立しているので、刊行順に読む必要はない。
推理小説というジャンルそのものや出版業界に対する批判・皮肉をユーモアを交えて描いた『名探偵の掟』『名探偵の呪縛』『超・殺人事件』などを発表している。
推理小説に関しては、作品を重ねるごとに徐々に作風が変化している。初期の本格推理のような意外性に重きを置いた作品が減少し、社会派推理小説のような現実的な設定にこだわるようになる。1986年の『白馬山荘殺人事件』では「密室だとか暗号だとかの、いわゆる古典的な小道具が大好きで、たとえ時代遅れだといわれようとも、こだわり続けたい」と語り、本格推理小説の「お約束事」を好む発言をしていた。ところがその4年後には『名探偵の掟』のプロローグとエピローグに当たる『脇役の憂鬱』を発表。そのような「お約束事」に疑問を抱くようになる。1990年の『宿命』で「犯人は誰か、どういうトリックかといった手品を駆使したそういう謎もいいが、もっと別のタイプの意外性も想像したい」と語り、2人に課せられた宿命という意外性を読者に示した。それ以降東野の推理小説は『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』などのフーダニットを重視した作品や、『探偵ガリレオ』『予知夢』などのハウダニットを重視した作品などスタイルを大きく転換することとなり、ミステリーの枠を広げる試みを続けている。近年は、社会性に重きをおいた作品が多い。『容疑者Xの献身』は高い評価と同時に、一部から強い批判も浴び議論を巻き起こした。
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